こんにちは。リスペクトの木村です。
メンテナンスやちょっとした修正まで、リモートでサーバを操作するにあたって必要不可欠なものといえばSSHクライアントです。
Windowsから接続する際に、どんなクライアントを使っているかと聞かれれば、大体の人はTeraTermやRLogin、Puttyと答えるのではないでしょうか。
しかし、世の中にはそれらを越えるかもしれないクライアントがいくつも存在していました。
そんな有象無象の中から厳選していくつか使って比較してみましたので、ご紹介します。
使ってみた
有償のものやフリーのもの、WindowsアプリケーションとしてのものもあればChromeアプリとして動作する珍しいクライアントもありました。
そこで、その中から・・・
- Bitvise SSH Client (フリー)
- SmarTTY (フリー)
- ZOC (有償)
- PrivateShell (有償)
- Serverauditor (Chromeアプリ)
- Secure Shell (Chromeアプリ)
の6つに厳選して使ってみました。
ちなみに
各クライアントで、日本語の入出力回りをチェックしています。
方法としては、TeraTermで日本語ファイル名で作成したものを、lsで表示させてみる、という感じです。
ちなみに、TeraTermで行ってみるとこんな感じでちゃんと表示されています。
これを一つの基準とします。
Bitvise SSH Client
Bitviseという会社が出しているSSHクライアントです。(5台までフリー)
Windows向けのSSHサーバーもあります。
接続時に設定できる項目は非常に多く、基本設定に加えて
接続設定やターミナルの見た目
ブリッジやプロキシ、ポートフォワーディングの設定もできます。
SSH接続時のホストキーの確認は、「Accept for This Session(今回のセッションのみ有効)」という珍しい選択肢もあります。
接続すると、コンソールに加えてSFTPによるファイル転送の画面も表示されます。
なかなか便利です。
日本語の表示入力はこんな感じです。2バイト文字が1バイト相当になって出力されているので、崩れて表示されています。
感想
触ってみた所、設定項目がかなり多いという印象を受けました。基本的にそのまま何もせずとも使えますので、入門者から上級者まで幅広く使えそうです。
かなりの項目が網羅されているので、一つのクライアントで完結させたいという場合は良いかもしれません。
基本的に自社のSSHサーバーとの連携がメインのようで、連携させるとRDPオプションが使えるようになったり、クライアント側からサーバーのコントロールパネルを呼び出すことが出来ます。
接続におけるログもメイン画面下部に随時表示されるのも嬉しいポイントです。
ただし、コンソールにもSFTP画面にもタブが付いてなくセッションの分だけウィンドウが増えるので、複数環境に接続したいという場合はあまり向かなそうです。
SmarTTY
SYSPROGSという会社のSSHクライアントです。(フリー)
ポータブル版もあります。
SSHだけに限らず、シリアルやTCP接続もできるようです。
接続時の設定は、Bitvise SSH Clientに比べると大分シンプルです。
接続するとこんな感じになります。画面下部にあるタブを使った、複数セッションの接続にも対応しています。
設定はあまり多くありません。
ファイル回りやキーボードの設定、コンソールの見た目の設定です。
ファイル転送はSFTPではなく、SCPによるパス指定のダウンロードやアップロードに対応しています。
ダウンロード時は、リモート側ブラウザが利用可能なので、一々パスを調べたりコピペする必要が無いのは嬉しいです。
日本語は表示のみで、入力は受け付けていません。
感想
Bitvise SSH Clientと比べるとかなりシンプルです。
接続情報の保存やタブが利用でき、それでいて軽いため、古い環境での利用やログ表示目的での利用に最適そうです。
これで日本語の入力も出来れば良かったのですが、海外製のクライアントにそれを求めるのは難しい所もあるので、使う場合は割り切って使った方が良さそうです。
ZOC
EmTec Innovative Software製のSSHクライアントです。($79.99、30日体験版あり)
Mac版もあります。
起動すると、クイック接続画面が表示されます。
・・・UIのフォントが結構大きめなので、Windows95~98のソフトみたいに見えます。
(クライアントではない方の)Rloginやシリアル、Telnetによる接続にも対応しています。
接続するとこんな感じです。メニューバー下部にタブが見えますが、そこでセッションを切り替えられます。
このクライアントも他とは一風変わっていて、REXXによるスクリプトを組めたり
ショートカットキーでカーソルの位置を教えてくれたり
ワンクリックで画面のログをデフォルトのプリンタでプリントアウト(確認なし)してくれたり
接続後のログを自動で取ってくれたりします。
こんな感じのログです。
どんなコマンドを入力したかの確認や出力結果を再確認するという用途に良さそうです。
特に、初期環境設定をコマンド入力でやっていたという場合に、どんな流れで行ったかを後から見直すという場合はかなり使えそうです。
日本語は、ログ上ではちゃんと出ていましたが、ターミナルでは文字化けして表示されます。
入力しても、文字確定後に英字が表示されます。
感想
Bitvise SSH Clientとはまた違った方面で機能豊富ですが、かなり上級者向けなようです。
挙げた機能の中では、自動でログ取ってくれるのが非常に便利です。
また、今回紹介するクライアントの中では非常に多くの接続方法に対応しているため、様々な環境に対応できそうです。
$79.99となかなかの値段がしますが・・・色々使いこなせるようであればその分の価値はあるのではないかと思いました。
PrivateShell
Imposant製のSSHクライアントです。($29.95~、30日体験版あり)
起動してみるとこんな感じです。見た目は結構シンプル。
SSHの他に、Telnetやシリアル接続も可能です。
接続後はこうなります。メニューも今までのものに比べるとシンプルで分かりやすいです。
ちなみに、タブには対応していませんが、「Terminal」を押すと新しいウィンドウが表示されます。
ファイル転送はSCPではなく、「SecureFTP」を押すとエクスプローラーのようなSFTPクライアントが起動するため、それを利用します。
設定は項目がそこそこ用意されていて、Terminalの見た目の変更はもちろん
トンネリング(ポートフォワーディング)の設定もここで行います。
日本語はこんな感じです。こちらも文字化け。
入力は一見成功しているように見えますが、viなどにそのまま渡すと、ファイル名が変になります。
感想
思っていたよりもシンプルで使いやすいですし、SFTPクライアントもあるのでかなり良い感じです。
唯一日本語入力できないのが少し残念ですが、他のクライアントと同じで割り切って使えば何とかなります。
そのままでも十分良いのですが、設定項目も多いので、自分好みにカスタマイズして使うのも良さそうです。
Bitvise SSH Clientと同じく、初級者~上級者まで幅広く対応しています。
個人的には、機能がほぼ同じで値段だけ違うのであればフリーの方を使うよな・・・という感じになってしまいました。
Serverauditor
珍しい事にChromeアプリとして提供されているSSHクライアントです。
iOS版やAndroid版もあり、各プラットフォームでPremiumアカウントを購入すると全てのプラットフォームで共有できます。
WindowsやMacで使うというよりは、Chromebook向けのような感じです。
起動すると、謎のボックスが現れます。
入力例がsshコマンドのようなので、それに沿って接続情報を入力してEnterを押すと
詳細入力画面が表示されます。
接続はSSHのみですが、鍵認証にも対応しています。
接続するとこんな感じです。
Windows向けのSSHクライアントのように見え、Chrome上で動いているとは思えないほどです。
サイドバーにある「+」を押すと新しいセッションが作成でき
タブのような感じで切り替えられます。
設定は見た目の設定とキーの設定、Premium向けっぽいログイン画面とかなーりシンプル。
コピペはCtrl+Shift+C/Ctrl+Shift+Vなのでご注意。
(cmd+~のコンビネーションはMac向け)
日本語はこちらも表示のみ。
感想
本当に必要な機能しか無かったり接続までのステップが分かりにくかったりと、betaと書いてあるだけの事はあります。
個人的にはiOS版がすごい使いやすかったので、もう少し機能が増えれば良いのですが、どこまで増やせるかはかなり未知数です。
Chromeさえあれば入れられるので、こんなのもあるというのを覚えておいて緊急時に入れて使う、というのが良いかもしれません。
Secure Shell
こちらも、Chromeアプリとして提供されているSSHクライアントです。
Chrome開発の総本山である、Chromiumで開発されています。
起動するとこんな画面になります。シンプルな接続設定画面ですが、Serverauditorよりは分かりやすいです。
接続しようとすると、フィンガープリントの確認をyes/noで聞かれたりとsshコマンドで接続しているような感じになります。
切断後は、これで終わりにするか続けるかをキーで選択します。
オプションは思った以上に大量です。
Ctrl+C/Ctrl+Vでのコピペを有効に(ctrl-c-copy/ctrl-v-paste)できたり、TeraTermのように選択するだけでコピーするような設定(copy-on-select)にもできます。
日本語は表示のみ。
感想
Serverauditorとどうしても比べてしまうのですが、こちらの方が操作のフローや機能は勝っている感じがします。
1ウィンドウ1ターミナルなので、複数立ち上げようとするとタブやウィンドウで分けてサイズを一々変えなければならないのが少し大変です。
1つのウィンドウだけでやりとりするのであれば良いかもしれません。
比較表
色々つらつらと書きましたが、ここまで紹介したクライアントの様々な機能について、わかりやすく比較表にしてみました。
Bitvise SSH Client | SmarTTY | ZOC | PrivateShell | Serverauditor | Secure Shell | |
---|---|---|---|---|---|---|
価格 | 5台までフリー | フリー | $79.99 | $29.95~ | フリー | フリー |
日本語 | △(入出力可、崩れる) | △(表示のみ) | ×(文字化け) | ×(文字化け) | △(表示のみ) | △(表示のみ) |
パスワードの入力タイミング | 接続前も接続時も | 接続前 | 接続前も接続時も | 接続時 | 接続前 | 接続時 |
鍵認証 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ポートフォワーディング | ○ | × | ○ | ○ | × | × |
SCP/SFTP | ○(SFTP) | ○(SCP) | ○(SCP) | ○(SFTP) | × | × |
タブ | × | ○ | ○ | × | ○ | ○(Chromeのタブ) |
コピー&ペースト | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
設定 | 多い | シンプル | 多い | 多い | シンプル | 多い |
SSH以外の接続 | × | シリアル/TCP | Rlogin/シリアル/Telnet etc… | シリアル/Telnet | × | × |
流石に鍵認証に対応していないクライアントはありませんでした。
まとめ
実際に使ってみたのですが、普段使いのクライアントを越えるものは見つけられませんでした。個性的ではあるのですが・・・。
後は、日本語(というよりはマルチバイトでしょうか)にフル対応しているクライアントはありませんでした。
正直な所、SSH接続して日本語使うかと言われればあまりありません。
ただ、日本語でコメントが入ってるソースコードや設定を表示して調整した場合に、このまま保存すると壊れてしまうのでは・・・と思う時が(個人的に)あるので、せめて表示だけでも安定していると良さそうです。
その点で言うと、意外とデスクトップアプリよりChromeアプリの方が安定して表示できていました。
色々使ってみましたが、どれも一長一短でしたし、SSHやシリアル以外の接続方法にも対応していたりChromeから使えたりと、様々なクライアントがありました。
どれも英語インターフェイスなので取っつきにくかったり、地味に設定項目が多かったりしますが、普段使っているものの他に使ってみるのも気分転換になって良いのではないかな、と思いました。
現場からは以上です。